映画のジャンルを利用したシナリオの書き方とは?

あるストーリーを作るときに既存のストーリーを下敷きにして創作する方法があります。これはいわゆるパクリではなく、ストーリーの構造だけを下敷きにする手法です。

ストーリーの構造とは、主人公の行動を抽象化したものです。たとえば、ストーリーAの構造を分析した結果、次のように主人公の行動が続くとします。

「主人公が女と出会う」「主人公が女と恋に落ちる」「主人公が恋に落ちた女には彼氏がいる」「主人公は女をめぐってその彼氏と闘う」「主人公は彼氏に勝ちその女と結ばれる」

そして、この分析した主人公の行動を下敷きにして新しいストーリーBを作るわけです。

ストーリーAでは「主人公が女と出会う」シーンは、東京のあるバーで出会うものでした。ストーリーBでは、留学先のアメリカで知り合うようにすれば、べつの印象を受けますよね。

主人公の行動を同じでも、どのような場所で会うのか、出会う女性のキャラを変えたり、敵役の男性のキャラを変えたりすることで、ストーリーの印象はかなり変わるものです。

映画にはジャンルというものがあり、これも主人公の行動によって分類されたある種のパターンなのです。

この映画のジャンルを利用して脚本を作りましょうというのが、今回の記事の主旨です。

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映画のジャンルを利用するメリットとは?

ブレイク・スナイダーは、

「何かを生み出すことは―映画のアイデア、登場人物の話し方、シーンなど何であれ―新鮮なひねりを加えるということだ」(49P)

と言っています。

そのために彼はジャンルという典型を利用しようとします。書こうとしている脚本のジャンルを熟知して、ひねりの加え方を学ぶ必要があるというのです。

ジャンルに則って脚本を書くと、方向性を見失ったときにジャンルを参照でき、軌道修正できます。必要なシーン、必要でないシーンも分ります。構成もしやすくなります。

復讐ものの物語であれば、物語の冒頭で主人公の大切な人が殺される必要があります。そして、主人公は犯人を捜す必要があります。

あなたは復讐ものの物語を書いているのですが、次の展開に迷ったら、既存の復讐もの映画を参照すれば、展開の仕方に困ることはありません。

映画のジャンルを参照すると、物語の展開を軌道修正できたり、必要なシーンや必要でないシーンが分かるメリットがあるのです。

ブレイク・スナイダーの主張するジャンルは10ありますが、一般的なジャンルの分類の仕方ではありません。

 

■家の中のモンスター

■金の羊毛

■魔法のランプ

■難題に直面した平凡な奴

■人生の節目

■バディとの友情

■なぜやったのか?

■バカの勝利

■組織のなかで

■スーパーヒーロー

 

ブレイク・スナイダー流の映画のジャンル10

なんとなく分かるようで分からないような…という感じです。詳しくみていきたいと思います。

非常に特殊な分類なので、ブレイク・スナイダーの著作から引用します。そのほうが伝わりやすいでしょうから。(テキスト53Pから74Pまでを抜粋します。)

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■家の中のモンスター

【作品】

「ジョーズ」「エクソシスト」「エイリアン」など。

【構成要素】

モンスター、家(逃げ場のない空間)、モンスターを殺したがっている人間

【基本ルール】

逃げ場のない空間で犯罪が起き―たいていの原因は人間の貪欲さ―、その結果、モンスターが生まれる。

モンスターは罪を犯した人間に復讐しようとするが、自分たちの罪に気付いた人間には寛大。それ以外の人間は、とにかく走って逃げ、隠れる。

 

■金の羊毛

【作品】

「スター・ウォーズ」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「ロード・トリップ」など。

【基本ルール】

主人公が旅の途中で人々と出会い、いろいろな経験をし、成長する。さまざまな出来事や経験が主人公にどんな影響を与えるかがプロットになり、主人公の成長がテーマとなる。重要なのは主人公の進んだ距離ではなく、変化である。

【その他、含まれるもの】

泥棒モノも含まれる。個人であれ組織であれ、秘宝探しのようなストーリーや任務遂行のストーリーも含まれ、同じルールに基づく。

最初は重要に思えた任務よりも、最終的には個人が何かを発見することのほうに意味があることが多い。盗みのプロットのひねりや展開よりも、そこから生まれた発見や変化のほうが重要になってくる。

 

■魔法のランプ

【作品】

「ブルース・オールマイティ」「マスク」「ライアーライアー」など。

【基本ルール】

主人公はシンデレラのようにひどい扱いを受けていることが多く、だからこそ主人公の願いが叶い、幸せになってくれることを願う。けれど人間の性として、どんなに哀れで同情できる主人公であっても、成功し続けると鼻についてくる。

だから主人公は最終的に、魔法よりも普通の人間―つまり観客と同じ人間―でいるのが一番だと気づくようになっている。最後には「一番大切なのは、道徳にかなった行いをすることだ」という教訓が用意されているのである。

 

■難題に直面した平凡な奴

【作品】

「ダイ・ハード」「シンドラーのリスト」「ターミネーター」など。

【基本ルール】

どこにでもいそうな奴が、どんでもない状況に巻き込まれる。主人公は観客と同じ普通の人間である。その普通の人間が勇気を振り絞って、解決しなければならない問題に直面する。この手のストーリーをうまく展開するためには、大問題と悪い奴が必要。

 

■人生の節目

【作品】

「失われた週末」「普通の人々」「酒とバラの日々」など。

【基本ルール】

主人公が直面するつらく苦しい経験は、人生という名の力によるところが多い。どんなにベストな選択をしていても、人生には目に見えない、理解しがたい<モンスター>が襲ってくることがある。

主人公はつらいところをくぐり抜けて初めて、解決策を見出す。<モンスター>が主人公に忍び寄り、主人公はその正体に徐々に気づき(自分の力を上回る強烈な力=人生というもの)、受け入れることによって、最後には勝利を収める。

 

■バディ(相棒)との友情

【作品】

「明日に向かって撃て」「レインマン」「リーサル・ウェポン」など。

【基本ルール】

最初は<バディ>はお互いを嫌っているが、旅をしていくうちに相手の存在が必要で、二人そろって初めて一つの完結した存在になることがわかってくる。そうは気づいても、こいつがいなきゃダメなんて、たまったもんじゃない!ってなり、また葛藤が生まれる。

やがて結末に近づくと、連れ添ってきたバディとケンカになり別れることになるが、これは本当の別れではなく、お互いなくして生きていけないこと、お互いエゴを捨てて仲よくするしかないことを最終確認する。

 

■なぜやったのか?

【作品】

「チャイナタウン」「JFK」「ミスティック・リバー」など。

【基本ルール】

「誰がやっかのか?」よりも、「なぜやったのか?」を追求。

犯罪が事件として明るみに出たとき、その背後にある想像すらしなかったような人間の邪悪な性が暴かれる。

 

■バカの勝利

【作品】

「デーブ」「フォレスト・ガンプ/一期一会」「レナードの朝」など。

【典型的な人物】

映画に登場する有名な<バカ>は、チャップリン、キートン、ロイド。

【基本ルール】

負け犬のバカに対してもっと大きくて権力の悪者―たいていは<体制側>―が存在するということ。ところが、そんな<バカ>が、体制側の連中をやきもきさせるのをみると、観客にも何だか希望が湧いてくる。

しかも<バカ>は、どんなに神聖で立派な体制や組織であっても容赦せずおちょくり、こてんぱに批判する。社会のアウイトサイダーの人生でもある。

 

■組織のなかで

【作品】

「カッコーの巣の上で」「アメリカン・ビューティー」「ゴッド・ファーザー」など。

【構成要素】

集団、組織、施設、家族

【基本ルール】

主人公は自分の属する組織に誇りを感じる一方で、組織の一員として生きるために自分らしさやアイデンティティーを失うという問題も抱えている。新しく組織に入ってきた人物(新人)の視点から語られることが多い。

「この組織はどう機能しているのか?」という疑問を抱いた新人が、同じ疑問を抱く観客に説明することになる。こうして組織内の掟やしきたりがいかに重要かが明確になり、さらには組織の<イカれた>実態も次第に暴かれていくのである。

 

■スーパーヒーロー

【作品】

「グラディエーター」「ビューティフル・マインド」「バッドマン」

【基本ルール】

人と<違う>とはどんなことか。独創的な考え方や素晴らしい能力を妬む凡人と向き合わなければならないとはどういうことかを、観客が共感できるように描く。観客が同情したり共感するのは、彼らが超人的な才能を持つ一方で、つらさや苦しみも抱えているからだ。

 

この映画ジャンルの使い方

これをそのまま下敷きにするということではなく、このように映画をジャンル(パターン)に分類することで、迷うことなく物語の展開が書き進められ、主人公の行動が分からなくなれば、例をあげた映画を参考にしてみようということなのです。

ある有名な脚本家は、常にある映画を下敷きにしていたようです。パターンを踏襲することで、シナリオの構成が作りやすくなるのです。

また、このような映画の構造を利用して、意外性のある物語も作れます。たとえば、「バディ(相棒)との友情」では、最初はお互い嫌い合っているのですが、それを好き合っているように変えてみてはどうでしょうか?

観客に「いつもと違うぞ」という印象を持ってもらえるだけで、その映画は新しいものだと感じられます。

映画ジャンル(パターン)と少し違ったものにしたり、あるジャンルとあるジャンルを組み合わせたり、さまざまな利用方法があります。あなたのお得意のジャンルを作り上げるのも面白いかもしれませんよ。

 

 

【引用は以下の参考文献から行いました】

「SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術」(2010年)フィルムアート社 ブレイク・スナイダー著/菊池淳子訳

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ABOUTこの記事をかいた人

沢村浩平(さわむらこうへい)

大阪府出身。ブログ「面白い物語に魅せられて」管理人

高校中退後に上京。様々なアルバイトを経て、保険調査会社に勤務する。保険の調査をしながら、テレビドラマの脚本や漫画原作の制作に携わる。

とは言っても、ある脚本家や漫画原作者の下書きばかりをしていた。要するにアシスタントである。

最初はテレビドラマの脚本を下書きをしていた。ひたすらプロットを作る日々が続く。ある日、先生に「これ、いいねえ」と言われ、はじめて脚本を書く。先生がそれに手を加えてみると、まるで別の作品になってしまったので、自分の技術のなさを痛感する。

保険調査会社に勤務しながら脚本の下書きを書いていたが、保険調査をしていた関係で、ある漫画原作者から協力を依頼される。

その企画はボツになったが、その後、その漫画原作者のもとで原作の下書きに携わる。潜入取材多数。タイトルは申し上げられないがテレビドラマ化されたものもある。

その後、脚本家の先生はご高齢のため亡くなり、アシスタントをしていた漫画原作者は廃業したため、独立することなく業界から足を洗う。

今現在は、保険調査の仕事をしながら、たまに演劇の自主公演の協力をしたり、専門学校生の自主制作映画の手伝いをしている。