ハリウッド式脚本術の葛藤に重点を置いたシナリオの書き方とは?

葛藤のない映画など非常につまらないでしょう。たとえば、主人公がA地点からB地点まで移動する物語がありました。ただ単に移動するだけでは飽きてしまいます。そこで誰かに追われているという状況を付け加えてやれば、緊迫感がでますよね。

さらにもうひとつ状況を加えてみます。移動しているのは、B地点に特効薬を運ぶためで、翌日までに届けないと患者は死んでしまうという設定にしてみましょう。

主人公は追われながら時間と闘うのです。そして、その特効薬を必要としているのが主人公の娘だとしたら、どうでしょうか?

さらにその主人公は娘が生まれてすぐに刑務所に入れられてしまったため、娘に一度も会ったことなく父親らしいことを何ひとつしてあげられていないのです。

このように移動するだけの映画であれば、まったく面白くないですが、このように状況を設定すると、ストーリーに緊張感が出て、観客にハラハラドキドキさせることができます。

主人公が刑務所に入ることになった理由は、幼い頃のトラウマが原因で人に暴力をふるってしまったからです。その幼い頃のトラウマが主人公の人格を作りあげたのです。このようなトラウマは人物像に深みを出します。

今回の記事では、ストーリーや人物像に深みを出すための方法について考えてみます。

Sponsored Link

葛藤とは?

シド・フィールドは「ドラマはすべて葛藤だ」(112P)と言っています。

葛藤とは対立のことです。葛藤は非常に重要です。なぜでしょうか?

シド・フィールドによると、

「葛藤はストーリーにリズムや緊張感を生み出し、読み手や観客をハラハラドキドキさせることができるから」(112P)

です。

 

では、葛藤を生み出すには何が必要でしょうか? 少し長いですが重要なところですので引用します。

「登場人物にはっきりしたドラマ上の欲求がなくてはならない。その欲求や目的の達成を邪魔する障害を作ると葛藤が生まれ、登場人物は何とか目的を達成しようと努力し、障害を乗り越えていく。

登場人物が強烈な価値観を持つ人物である場合には、相反する価値観を持つ登場人物を作ると、両者の間に強烈な葛藤が生まれる。葛藤には物理的な葛藤と精神的な葛藤があり、どちらも重要である」(113P)

 

登場人物にはっきりとした欲求があるからこそ、それを邪魔する障害を作ることによって、葛藤が生まれるわけです。

登場人物の欲求が明確であればあるほど、障害は作りやすくなります。障害がはっきりすればするほど、ハラハラドキドキ感が増すわけです。

登場人物の欲求も、それを邪魔する障害も、そして葛藤も、具体的になるまで作り込む必要があります。

この3つが理解しやすく、分かりやすいものであればあるほど、観客に伝わりやすくなるのです。

葛藤には、「精神的葛藤」と「物理的葛藤」の2種類あります。

 

■精神的葛藤 ― 不安、恐怖、忍耐など、登場人物の心の中で働く圧力

■物理的葛藤 ― 戦争、厳しい気候、誘惑、苦難など、外部から働く圧力

 

どちらかの葛藤だけでなく両方の葛藤を加えることで、物語に深さが増します。

たとえば、「大災害」という状況設定の中で、主人公が「不安」に打ち勝つ物語であるとか、「戦争」のさなかに、主人公が「恐怖心」と闘う物語であるとか、外面的(物理的)なストーリー(状況)という大枠があって、その中で主人公が「恋」や「友情」などを成就するという風に作ると、奥深い物語が作れるわけです。

 

シド・フィールドの語る「Circle of Beingとは?

Sponsored Link

「Circle of Being」とは、聞きなれない言葉です。

「Circle of Being」とは、

「9歳から18歳のあいだに起こった出来事で、ストーリーに大きな影響を与えるもの」(116P)

のことです。

 

要するに、トラウマを引き起こす事件のことです。

 

たとえば、

「親や愛する人の死、精神的にも肉体的にも深い傷を残す虐待、見知らぬ土地へ行くこと等は、トラウマとなって、登場人物の人生全体に影響を及ぼすことがある」(116P)

わけです。

 

人には誰でも人格を形成するにあたって、影響を与えられた出来事があります。

たとえば僕の場合、高校1年生のときに付き合っていた彼女が自殺したことが、僕の人生に強い影響を与えていると思っています。

彼女が自殺してからというものの、女性と付き合うと僕から去っていくのではないのか、僕は女性を幸せにするどころか救うことさえできないのではないのか、などと、いろいろな想いが去来して、生きている感じがしませんでした。

こういった出来事は、僕自身の中で生き続け、性格や行動に影響を与え続けるわけです。

人格形成に影響を与えた出来事は何かを常に考えるようにすると、登場人物に深みが生まれます。

たとえば、ボクサー映画。

主人公は幼いころに虐められた経験があり、それが邪魔をして強気になることができません。いつも気持ちで負けています。それを「どう克服するのか?」が物語の中心になるかもしれません。

このように大人になるまでに起きた出来事の中で、その後大人になってから影響を与える出来事を見つけ出すのです。

それが「何なのか?」それは「どのように主人公を苦しめるのか?」それを「どのように克服するのか?」を考えるのです。

 

 

【引用は以下の参考文献から行いました】

「素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック シド・フィールドの脚本術2」(2012)フィルムアート社  シド・フィールド著/菊池淳子訳

Sponsored Link

ABOUTこの記事をかいた人

沢村浩平(さわむらこうへい)

大阪府出身。ブログ「面白い物語に魅せられて」管理人

高校中退後に上京。様々なアルバイトを経て、保険調査会社に勤務する。保険の調査をしながら、テレビドラマの脚本や漫画原作の制作に携わる。

とは言っても、ある脚本家や漫画原作者の下書きばかりをしていた。要するにアシスタントである。

最初はテレビドラマの脚本を下書きをしていた。ひたすらプロットを作る日々が続く。ある日、先生に「これ、いいねえ」と言われ、はじめて脚本を書く。先生がそれに手を加えてみると、まるで別の作品になってしまったので、自分の技術のなさを痛感する。

保険調査会社に勤務しながら脚本の下書きを書いていたが、保険調査をしていた関係で、ある漫画原作者から協力を依頼される。

その企画はボツになったが、その後、その漫画原作者のもとで原作の下書きに携わる。潜入取材多数。タイトルは申し上げられないがテレビドラマ化されたものもある。

その後、脚本家の先生はご高齢のため亡くなり、アシスタントをしていた漫画原作者は廃業したため、独立することなく業界から足を洗う。

今現在は、保険調査の仕事をしながら、たまに演劇の自主公演の協力をしたり、専門学校生の自主制作映画の手伝いをしている。