浦沢直樹【マスターキートン】第3話「小さなブルーレディー」あらすじと解説

浦沢直樹「MASTERキートン」の第3話「小さなブルーレディー」の「あらすじ」「解説」「ワンポイント」です。作品の第3話ですので、第1話、第2話で描かれた主人公の人間関係についても、読者は知りたくなります。

ただし、この第3話は、1話2話と雰囲気が違います。「依頼されて行動」というパターンではないです。

では、どのように物語は始まるのでしょうか、というところが、読解のポイントになると思います。

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あらすじ&解説

キートンの前に娘の百合子が現れる。百合子は母親に結婚話が持ち上がっていると告げると、キートンは気が気ではなかった。

キートンは百合子の母親とは離婚していたのだった。キートンは、百合子に彼氏の田島昇を紹介される。・・・

ここまで読み進めても話が見えてこない。。。

第3話の核となっている話は何であろうかと思っていると、キートンは百合子が悩みを抱えていると悟るのだった。

ようやく、物語が進みそうな予感がした。

百合子はある遺跡の保存運動に関わっていた。市が遺跡を壊して道路を作るのをなんとか阻止しようとしていたのだった。また、百合子は学校の担任とうまくいっていないらしい。学校をさぼってディスコに行っていると思われているようだった。

キートンは百合子が通い詰めている遺跡のある工事現場に行ってみた。工事の責任者らしき人物は市からもらった許可書をキートンに見せる。

キートンは特殊な接着剤をブルドーザーに塗って悪戯をした。キートンが工事現場でおこなった行為は正当化できない。

強制撤去を阻止するために市民と業者らが小競り合いを繰り広げているニュースをよく見かけるが、そもそも業者に文句を言ったところでどうにもならないし、筋違いも甚だしい。キートンは市の許可書を見せられても悪戯をしたのだ。

一読して違和感を感じなかったのは、工事現場の責任者が悪徳業者のように描かれているからなのだ。正論を言ったとしても相手の容姿や言葉づかいが悪ければ、正しくないように周りには思われてしまう。

仮に工事責任者の体格を弱よわしく、表情を気が弱そうに描き、ペコペコ頭をさげながら「娘さんをなんとかしてくれないでしょうか?」とお願いするようなシーンに変更するだけで、大きく印象が変わるだろう。

そのときキートンは悪者になる。正しさを伝えたいのであれば、伝え方も正しくないと伝わらないのだ。

悪役の描き方を考えさせられる回であった。

たとえば、「必殺仕事人」の主人公たちは人殺しである。人を殺しているにもかかわらず視聴者が視聴後にスッキリするのは、悪役が徹底して悪者に描かれているからだ。

悪役に病気で苦しんでいる娘がいて、その娘の治療代を稼ぐために悪に走っているというシーンを付け加えるだけで、仕事人は思い切り殺せないような気がする。

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いやいや、もちろん、殺せるんですけど、視聴者の反応はかなり複雑になると思うんですよ。

中村主水が殺そうとしたときに病気で苦しんでいる娘が出てきて、「おとっつあんを殺さないで。あいたのために薬を買おうと思ってやったことなの。殺すなら、あいたいを殺して」と言われたら、あっさりと殺せないですよね。

視聴後にスッキリしないですよ。放送後にテレビ局にメールがたくさん届きそうです。

もし中途半端に悪であれば、主人公たちが殺すシーンを見ても楽しくないであろう。視聴者があんなやつ死んでしまえと思うほど悪者が悪いことをしているからこそ、主人公たちが人を殺しても違和感を感じないのだ。そういう意味で言うと、この回の悪役の描き方はうまくいっていないと言える。

あくまでも僕の推測だが、この回のアイデアはキートンの娘を登場させよう、ということであったのではないだろうか。

さらに娘を登場させるついでにキートンが離婚していることにも触れておこう。では、どういう風に登場させようか、と考えながら作り上げていったような気がする。

 

ワンポイント

■悪役ははっきりと悪だとわかるように描くこと

■物語の冒頭で核になる話を早く出すこと

■物語には謎とその解決が必要である

■物語の展開はテンポよくが基本

 

MASTERキートン第3話「小さなブルーレディー」「MASTERキートン 完全版 コミック 全12巻完結セット (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)」より

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ABOUTこの記事をかいた人

沢村浩平(さわむらこうへい)

大阪府出身。ブログ「面白い物語に魅せられて」管理人

高校中退後に上京。様々なアルバイトを経て、保険調査会社に勤務する。保険の調査をしながら、テレビドラマの脚本や漫画原作の制作に携わる。

とは言っても、ある脚本家や漫画原作者の下書きばかりをしていた。要するにアシスタントである。

最初はテレビドラマの脚本を下書きをしていた。ひたすらプロットを作る日々が続く。ある日、先生に「これ、いいねえ」と言われ、はじめて脚本を書く。先生がそれに手を加えてみると、まるで別の作品になってしまったので、自分の技術のなさを痛感する。

保険調査会社に勤務しながら脚本の下書きを書いていたが、保険調査をしていた関係で、ある漫画原作者から協力を依頼される。

その企画はボツになったが、その後、その漫画原作者のもとで原作の下書きに携わる。潜入取材多数。タイトルは申し上げられないがテレビドラマ化されたものもある。

その後、脚本家の先生はご高齢のため亡くなり、アシスタントをしていた漫画原作者は廃業したため、独立することなく業界から足を洗う。

今現在は、保険調査の仕事をしながら、たまに演劇の自主公演の協力をしたり、専門学校生の自主制作映画の手伝いをしている。