浦沢直樹【マスターキートン】第2話「天使のような悪魔」あらすじと解説

前回の記事に続きまして、浦沢直樹「MASTERキートン」の第2話「天使のような悪魔」の「あらすじ」「解説」「ワンポイント」です。

作品の第2話ですので、第1話で紹介された主人公がどのように活躍するのか、読者は注目しています。作品の方向性を決定する非常に重要な回になります。

第1話から第3までは、読者を獲得できるかどうかを決定するとても大切な回になります。

 

あらすじ

キートンはある男に甥を探してほしいと頼まれてイタリア・フェレンツェに来ていた。その男の甥であるの母親が亡くなり、受取人になっていた宏の委任状が必要だったのだ。

宏の母親は宏に絵を続けさせてやりたかったために、4000万という生命保険に加入していた。宏の伯父(依頼人)は、宏の母親である妹の気持ちを尊重し、なんとか宏にお金を受け取らせてやりたかった。

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しかし、キートンがフェレンツェに来ると、宏は失踪していた。2か月前から美術学校にも出席していなかった。

物語は宏はどこへ行ったのかという謎を追うようにして展開される。

宏と同居していたピエトロという人物は、実はメーダというテロリストだった。日本人である宏を資金源にしたかったので、宏に近づいていたのだった。

宏はメーダに追われていることを知っていても日本には帰れなかった。遺跡の絵を完成させて最愛の母親に見せたかったのだ。

 

解説

この物語の核心は、ある人物のために絵を描いていたのに、結局その人物に見せることができなかったという喪失感にある。

人は大切な者を失ってもなお生き続けられるのは、その大切な者の想いがいつまでも心の中に居続けるからであるだろう。

これから宏はどのような人生を歩むだろうか。いずれにしろ、絵をやめることはないだろうと思う。そう感じさせてくれる読後感だった。

物語の冒頭、委任状に宏のサインをもらってくるのがキートンの今回の仕事だと明かされる。そして、なぜ委任状に宏のサインが必要なのかもしっかりと説明される。

本作のような調査もの、探偵もの、警察ものなどは、物語のきっかけが非常に作りやすい。依頼人から依頼があるからだ。

依頼 → 行動 → 解決

このような物語の構造になる。

宏の母親が亡くなり、母親は宏を受取人にした生命保険に加入していたのだった。その額、4000万円。これでキートンの行動の道筋ができる。

キートンは宏に会いにイタリアのフィレンツェに来ていた。宏が留学している美術学校に行ってみたが、トップシーンにもあったように、宏は2カ月前から学校には来ていないのだった。

それはなぜか?

キートンは2か月前に宏が母親に出したハガキに書かれてあった住所を訪ねていった。その途中、キートンのあとを怪しげなふたりの男がつけている。

男たちは誰か?

訪ねていった住所は、ピエトロの下宿だった。ハガキが残されていたから住所がわかり、その住所へ向かっているときに男たちにつけられる。無駄がないし、主人公の行動に必然性がある。

宏はピエトロと一緒に暮らしていたようだったが、ピエトロの素性がよくわからない。

ピエトロとは何者か?

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ピエトロの口から、宏は下宿先でトラブルに巻き込まれ、また政治運動にも加わっていたことが明かされる。近所での聞き込みの結果、宏はやはり政治運動にかかわっていた可能性が高いことがわかった。

さきほどの怪しげな男たちがキートンに近づいてくる。逃げるキートン、追う男たち。男たちは刑事だった。

キートンがただ警察と接点を持つのではなく、正体不明の男たちに追われるシーンを描くことで緊迫感が出る。そのあとで、キートンと協力関係になる。

キートンは刑事から、宏はテロリストであるメーダと接点を持っている、宏はテロリストの資金源になっている可能性があることが告げられる。

キートンは、フィレンツェ郊外、スベダレ・ドーモ遺跡にやってくる。

キートンはピエトロにあとをつけられていた。

キートンはピエトロに襲われ闘っているときに、うしろから宏に殴られる。読者がえッ?となる。

そのあいだ、警察ではピエトロとメーダの指紋が一致し同一人物であったこと、宏は政治運動には関係なかったことが判明。

キートンがピエトロに襲われる前に、この情報が明かされるとスリルがなくなるので、ピエトロに襲われそうになったシーンの途中で、警察のシーンが挟まれている。情報を読者に示す順番を考えている証拠である。

キートンと宏は別々の場所に閉じ込められている。

二人の会話から、宏は偶然にピエトロが血の付いた剣を持っていることに気づき、怖くなって失踪したことが明かされる。

そのころ、警察ではロンドン警視庁に照会していた結果が届き、キートンが生存術のエキスパートであることがわかる。わかったあとで、キートンが囚われの身から脱出するのだ。ここでも、読者に情報を示す順番が大切であることがわかる。

警察の期待通りに、キートンはピエトロことメーダを倒す。

ラストシーンは、宏がキートンに描きかけの絵を見せる。キートンは宏からこの絵を完成させて母親に見せたかったと打ち明けられる。

しかし、その母親は宏に保険金を残し亡くなってしまっていたのだが、、、。1話と同じように、ラストシーンは登場人物の心情が描かれて終わる。

 

ワンポイント

■状況設定をしっかりと行うこと

■主人公の行動の目的を説明すること

■必要な情報を出す順番を考えること

■ラストシーンに登場人物の心情を描くこと

■主人公が行動するには「きっかけ」と「必然性」が必要

 

 

MASTERキートン第2話「天使のような悪魔」「MASTERキートン 完全版 コミック 全12巻完結セット (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)」より

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ABOUTこの記事をかいた人

沢村浩平(さわむらこうへい)

大阪府出身。ブログ「面白い物語に魅せられて」管理人

高校中退後に上京。様々なアルバイトを経て、保険調査会社に勤務する。保険の調査をしながら、テレビドラマの脚本や漫画原作の制作に携わる。

とは言っても、ある脚本家や漫画原作者の下書きばかりをしていた。要するにアシスタントである。

最初はテレビドラマの脚本を下書きをしていた。ひたすらプロットを作る日々が続く。ある日、先生に「これ、いいねえ」と言われ、はじめて脚本を書く。先生がそれに手を加えてみると、まるで別の作品になってしまったので、自分の技術のなさを痛感する。

保険調査会社に勤務しながら脚本の下書きを書いていたが、保険調査をしていた関係で、ある漫画原作者から協力を依頼される。

その企画はボツになったが、その後、その漫画原作者のもとで原作の下書きに携わる。潜入取材多数。タイトルは申し上げられないがテレビドラマ化されたものもある。

その後、脚本家の先生はご高齢のため亡くなり、アシスタントをしていた漫画原作者は廃業したため、独立することなく業界から足を洗う。

今現在は、保険調査の仕事をしながら、たまに演劇の自主公演の協力をしたり、専門学校生の自主制作映画の手伝いをしている。