クリストファー・ボグラーの物語の二重構造をいかしたシナリオ作成術とは?

物語の中にひとつだけストーリーラインがあったとします。それがたとえ魅力的なストーリーラインであったとしても、何か物足りない感じがするでしょう。

なぜなら、映画は2時間程度のなかに物語を納めないといけないので、どうしても語れることが制限されてしまうからです。

そこで物語に深みを出すために、ストーリーラインをひとつ増してみるのです。そうすることによって、より深みのある味わい深いストーリーラインができます。

この方法は、クリストファー・ボグラーがお得意としている方法でもあるのです。

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物語の二重構造とは?

クリストファー・ボグラーは「良質なおとぎ話は二つの物語を語っている」と言っています。

物語を二重構造にするのは、物語に深みを出すためというよりか、観客に伝えたいことをしっかりと伝えるためであるとも言えます。

第一の物語と第二の物語は、それぞれ何を語ればよいのでしょうか?

 

第一の物語は、外面的な目的を達成するための物語、つまり主人公が身体的な危険にさらされる実際の旅が描かれる。 

第二の物語では、主人公が教訓を学んだり、自分の性格に欠けている部分を育てるため、さまざまな感情や特質の領域で試練を受ける、心の旅が描かれる。(105P)

 

たとえば、刑事もので説明してみます。

主人公である刑事の目的は、犯人を逮捕することです。これだけであれば、観客は誰が犯人だろうかという気持ちだけでドラマを見続けることになります。

そこで、第二の物語を導入します。

主人公の刑事が捜査を続けているうちに、犯人が実は主人公の高校時代の同級生である可能性が高まり、そのうえ主人公の刑事がその同級生をいじめ抜いて、それが原因で同級生は高校を中退したという設定を付け加えるだけで、物語はがらりと変わってきます。

主人公は苦悩します。同級生は高校時代のいじめが原因で犯行を犯したのだろうか。それであれば、今回の事件の真犯人は俺なのではないだろうか、と。

主人公は犯人を追いかけると同時に、自分自身の罪を追求することになるのです。

主人公が自分自身の罪を追求することは、自分自身を知るということです。主人公は犯人を追いかけているようで、実は自分自身の本当の姿を追いかけているわけです。

しかし、実際のドラマでは、主人公が高校時代にいじめをしていたという設定は採用されないと思います。

採用されるのであれば、主人公が率先していじめをしていたという設定ではなく、脅されて(イヤイヤながら)いじめをしていたという設定になるでしょう。

外面的な物語と内面的な物語の2つを設定することで、より奥深い物語ができるわけなのです。

 

ヒーローズ・ジャーニー(外面的な物語バージョン)

神話学者であるキャンベルの英雄伝説の要約版をボグラー流にアレンジしたものが「物語の法則」に掲載されています。

これはボグラーが現代映画のいくつかのテーマを反映させて修正したものです。神話のガイドラインに沿って物語を作ることもできます。

ただし、クリストファー・ボグラーが言うように、以下に掲載するのはたくさんあるバリエーションのうちのひとつに過ぎません。書くものに応じて柔軟に組み替えていくことが大切になってきます。

 

(01)ヒーローが日常の世界にいるところが紹介される

主人公は、日常の世界から主人公にとって新しい未知の世界へと舞台を移す。

 

(02)冒険への誘いが来る

主人公に、問題、挑戦、冒険が与えられる

 

(03)ヒーローは最初は乗り気ではない

この時点の主人公は、冒険の入口で尻ごみすることが多い。

主人公が直面するのは、大きな恐怖である。

 

(04)ヒーローは賢者に勇気づけられる

このあたりまでには、主人公の師となるキャラクターが登場している。

賢者は主人公にできるだけ付き添う。

最終的に主人公は自分で未知に立ち向かわなければならない。

 

(05)ヒーローが自分の世界の戸口を出ていく

主人公が初めて特別な世界へ入っていく。

この瞬間から物語は動き出し冒険が進み始める。

主人公は自分の旅にのめり込み、もう振り返ることはない。

 

(06)ヒーローが試練や支援者に出会う

主人公は特別な世界で仲間と敵を作り、訓練の一環として試練や挑戦を乗り越えていく。

 

(07)ヒーローが深い洞窟にやってくる

主人公がついに危険な場所へやってくる。

探している宝は地下に隠されていることが多い。

 

(08)最大の試練

主人公がどん底を味わう瞬間である。

主人公は死ぬかもしれない状況に陥ったり、神話の野獣と戦わされたりすることになる。映画の観客にとっては、洞穴の外で勝者が現れるのを待つ時であり、不吉な瞬間である。

主人公が試練の渦中で死んだように見え、そしてまた生き返る場面は重要である。

ここで起きる事件によって、観客は主人公と一体化する。

主人公とともに死の瀬戸際の感覚を体験する。

観客は一時的につらい気持ちを味わい、その後主人公が生還することで、自分も生き返ったような感覚を味わう。

 

(09)ヒーローが剣を手にする

主人公が探していた宝を手にする。

主人公が女性と和解する場合もある。

主人公が勝ちとる、あるいは救出する宝そのものが女性であることも多く、そこでラブシーンとなったり、聖なる婚姻が結ばれたりする。

 

(10)帰路につく

主人公はまだ森から出ていない。

ここで激しい逃亡劇となることもあり、主人公は霊薬や宝を奪われた執念深い敵から追いかけられる。

主人公がまだ父親や神々との和解を果たしていない場合、ここでその相手が追いかけてくることもある。

 

(11)復活する

主人公は冒険の体験で変化を果たし、特別な世界から出てくる。

 

(12)宝を持っての帰還

主人公は日常世界に戻ってくるが、霊薬や宝、あるいは特別な世界で学んだ教訓を持ち帰らないことには、冒険も無意味なものになってしまう。

宝は単なる知識や経験のみの場合もあるが、主人公が人類に役立つ霊薬や恩恵を持ち帰らない場合は、持ち帰れるまで冒険を続けるよう運命づけられる。

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簡単に説明すると、ヒーローズ・ジャーニーとは、主人公が現在生活している空間から飛び出し、異世界に行って、様々な体験をして、戻ってくるが、そのとき、主人公は出発前より成長している、という過程であるということです。

物語で描かれるのは、主人公はどのように出発したのか、主人公はどのように飛び出したのか、主人公はどのような体験をしたのか、主人公はどのように戻ってきたのか、、、、

あるいは、主人公はどうして出発したのか、主人公はどうして飛び出したのか、主人公はどうして戻ってきたのか、、、、

つまり、主人公の「どのように」や「どうして」などを描いていけば、物語のエピソードはつながっていくということです。

 

ヒーローズ・ジャーニー(内面的な物語バージョン)

クリストファー・ボグラーは、良質な物語には外面的な物語と内面的な物語の両方が備わっていると言っています。

ヒーローズ・ジャーニーは外面的な物語のひな形でしたが、内面的な物語用のひな形をご紹介します。

 

 

(01)

<日常生活>に住んでいる主人公は、最初は問題への認識が不足しており、もはや効果のない戦略を使ってなんとかやっていこうとしている。

 

(02)

<冒険への誘い>を通じて主人公の認識が高まり、すぐにも変化が必要だということを自覚しはじめるが、そのため何をしたらいいのかまだわからない。

 

(03)

未知のものに直面したことへの自然な反応として、変化に対する恐れや抵抗の気持ちが生じる。

主人公は一時的に無力になるか否認に走る。正しい行動をしたい気持ちも、疑いにかき消されてしまう(冒険の拒否)。

 

(04)

主人公が知恵を手に入れられる場所や自分の心の強さを見つけ出し、恐れに打ち勝つ。(賢者との出会い)

 

(05)

励まされ、あるいは状況に強いられ、主人公に変化が起き、心の<戸口を通過>する。

 

(06)

主人公はさらに心の深い場所に踏み込み、心の内の<特別な世界>でやっていくことを覚え、新しい環境で実験を試み、自分の力を<試練>にさらす。

また。自分の内面世界における<仲間>や<敵>がなんなのかを知っていく。

 

(07)

外面的な旅で<最も危険な場所へ接近>しつつ、内面的にもさらに深い感情を探り、困難で恐ろしい何かに対峙するための解決策を考え、大きな変化への準備を整えていく。

 

(08)

現実の<最大の試練>と並行して、生死の境に直面し、心の大きな変化が起きる。

い自己認識は、極度のプレッシャーによって消える。幻想が壊れるか、その激動や破綻のなかから、新しい自己の概念が生まれてくる。

 

(09)

実際の<報酬>を手にするとともに、主人公は内面にも新しい人生の意義を受け入れ、愛情や絆に喜びを感じたり、心の変化がもたらした結果を認識するようになる。

 

(10)

現実の<帰路>で、主人公は内面においてもさけがたい試練を与えられ、再び新たな挑戦に取り組まなければならない。

実際の追跡・逃亡・救出劇は、心の勧誘や、古い行動パターンに戻ろうとする心理、主人公の変化を妨げる予期せぬ新しい試練の象徴になっていることもある。

主人公の新しい姿を世界が受け入れようとはせず、古い環境に戻らせようとしている場合もある。

 

(11)

主人公の外面的な変化や<復活>は、主人公が変化に取り組みつづけようとする意思の表明だが、内面の物語を悲劇に変えようと、最後の危険が待ち構えていることもある。

 

(12)

主人公が現実の問題を乗りこえ、感情的な問題にも成長を示し、勝利をおさめる。または、聖なる婚姻を経て、敵対していたパーソナリティが調和やバランスをもたらしてくれる。

 

 

物語を作るときは、外面的な物語と内面的な物語をどのように按配するのかが重要になってきます。

外面的な物語を作るときは、ヒーローズ・ジャーニー(外面的な物語バージョン)をベースにして作り、内面的な物語を作るときは、ヒーローズ・ジャーニー(内面的な物語バージョン)をベースにして作るとよいでしょう。

 

 

【引用は以下の参考文献から行いました】

「物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術」(2013年)アスキー・メディアワークス社 クリストファー・ボグラー/デイビッド・マッケナ著/府川由美恵訳

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ABOUTこの記事をかいた人

沢村浩平(さわむらこうへい)

大阪府出身。ブログ「面白い物語に魅せられて」管理人

高校中退後に上京。様々なアルバイトを経て、保険調査会社に勤務する。保険の調査をしながら、テレビドラマの脚本や漫画原作の制作に携わる。

とは言っても、ある脚本家や漫画原作者の下書きばかりをしていた。要するにアシスタントである。

最初はテレビドラマの脚本を下書きをしていた。ひたすらプロットを作る日々が続く。ある日、先生に「これ、いいねえ」と言われ、はじめて脚本を書く。先生がそれに手を加えてみると、まるで別の作品になってしまったので、自分の技術のなさを痛感する。

保険調査会社に勤務しながら脚本の下書きを書いていたが、保険調査をしていた関係で、ある漫画原作者から協力を依頼される。

その企画はボツになったが、その後、その漫画原作者のもとで原作の下書きに携わる。潜入取材多数。タイトルは申し上げられないがテレビドラマ化されたものもある。

その後、脚本家の先生はご高齢のため亡くなり、アシスタントをしていた漫画原作者は廃業したため、独立することなく業界から足を洗う。

今現在は、保険調査の仕事をしながら、たまに演劇の自主公演の協力をしたり、専門学校生の自主制作映画の手伝いをしている。