「葛藤」の理解なくしてハリウッド脚本術での脚本の書き方は学べない

ハリウッド映画を観ると、すべての作品が感動するわけではないかもしれませんが、退屈はしないと思います。

退屈しない作品を作ることがハリウッド映画の最低限のノルマであり、どんなにB級映画といえども退屈だけはさけなければなりません。

そのためにハリウッド映画には至るところで仕掛けが施され、最後まで観客のみなさんが楽しく観賞できるようになっています。

そして、その仕掛けの中でいちばん重要なのが「葛藤」です。どのような脚本術の書籍の中でも「葛藤」という項目は出てくるほど大切なものなのです。それは、クリストファー・ボグラーの脚本術も例外ではありません。

今回の記事では、クリストファー・ボグラーが考える「葛藤」というものを取り上げてみます。

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葛藤ってなに?

物語が展開するためには「葛藤」が必要です。では、「葛藤」とは何でしょうか?

「葛藤」とは、対立のことです。

「物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術」の共著者であるデイビッド・マッケナは「葛藤」と表現せずに、「両極性」と表現しています。

 

物語の最も基本的なレベルに二つの対立した勢力を置き、身体的、感情的、哲学的な闘い(すなわち相互アクション)に向かわせ、対立が解消するまでそれを続ける。対立は普通、両極の一方が勝利をおさめるか、最初のうちは存在しなかった新たな何かが両陣営によって生まれてくるまで続く。(60P)

 

文章で表現すると小難しく聞こえますが、葛藤はそんなに難しいものではありません。

たとえば、四国に友人が住んでいました。病気を患い危篤状態でした。主人公は友人に会いに四国に行こうとするのですが、台風で瀬戸大橋は渡れません。もちろん船もでません。

主人公は四国に行きたいのですが、台風がそれを阻止しています。「どうしよう?」と主人公は悩むわけです。これが葛藤ですね。

あるお店に立ち寄って欲しい物が見つかりました。買いたいという気持ちと、価格が高いから買うのをやめようという気持ちの狭間で揺れ動いたことが誰にもあると思います。

これも葛藤ですが、上の葛藤と違うのは、主人公と対立するのは、主人公自身であり、主人公の別の感情と闘うわけです。

葛藤を矢印だと考えてもいいかもしれません。

「←」と「→」では、矢印が正反対の方向を向いていますね。これでは先に一歩も進めないです。

葛藤に関して、いろいろな解釈があります。自分なりに葛藤というものを捉え直してみると、より理解が深まるでしょう。

 

葛藤とは矢印の向きだと思え

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僕は「葛藤」というものを矢印の向きだと思っています。登場人物の目的(の向き)が違う、登場人物の気持ち(の向き)が違う、、、どのような要素でも良いので、物語の中であらゆるものの向きが違うことが葛藤だと解釈しています。

そのように理解すると、「葛藤」が作りやすくなります。脚本を書いているときに、どんどん向きを変えればよいだけですから。

 

男が女を好きになったが、女は男を好きではなかった。 ⇒  男→女、しかし、女↑男

 

このように矢印の向きを変えると、「葛藤」が生まれます。「葛藤」は、何気ない会話の中にもあらわれます。こんな会話にも「葛藤」が隠れています。

 

男「腹減ったねえ。焼肉、食べる?」

女「トンカツがいい」

男「焼肉にしよっ?」

女「なら、食べない」

(男→焼肉 女→トンカツ)

 

実は「葛藤」はストーリーを作る時に役立つだけではなく、セリフを書くときにも役に立つのです。常に矢印の方向を変えるようにすると意識することもなく「葛藤」が作れます。

ストーリーの展開とは、違っていた矢印の向きが一致して、さらにまた向きが変わって、それからまた向きが一致して、の繰り返しなのです。

矢印の向きがずっと違っていたら、イライラして最後まで映画を鑑賞できないかもしれません。ところどころに一致するところがあるから、一息つけるのです。

そうやって、観客の心を揺さぶり続けることで、最後まで退屈せずに観賞できる映画の脚本が作れると考えています。

 

 

【引用は以下の参考文献から行いました】

「物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術」(2013年)アスキー・メディアワークス社 クリストファー・ボグラー/デイビッド・マッケナ著/府川由美恵訳

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ABOUTこの記事をかいた人

沢村浩平(さわむらこうへい)

大阪府出身。ブログ「面白い物語に魅せられて」管理人

高校中退後に上京。様々なアルバイトを経て、保険調査会社に勤務する。保険の調査をしながら、テレビドラマの脚本や漫画原作の制作に携わる。

とは言っても、ある脚本家や漫画原作者の下書きばかりをしていた。要するにアシスタントである。

最初はテレビドラマの脚本を下書きをしていた。ひたすらプロットを作る日々が続く。ある日、先生に「これ、いいねえ」と言われ、はじめて脚本を書く。先生がそれに手を加えてみると、まるで別の作品になってしまったので、自分の技術のなさを痛感する。

保険調査会社に勤務しながら脚本の下書きを書いていたが、保険調査をしていた関係で、ある漫画原作者から協力を依頼される。

その企画はボツになったが、その後、その漫画原作者のもとで原作の下書きに携わる。潜入取材多数。タイトルは申し上げられないがテレビドラマ化されたものもある。

その後、脚本家の先生はご高齢のため亡くなり、アシスタントをしていた漫画原作者は廃業したため、独立することなく業界から足を洗う。

今現在は、保険調査の仕事をしながら、たまに演劇の自主公演の協力をしたり、専門学校生の自主制作映画の手伝いをしている。